大家に修繕を頼んだのに直してもらえない!借主ができる3つの法的対処法

大家に修繕を頼んだのに直してもらえない!借主ができる3つの法的対処法

「エアコンが壊れて真夏なのに連絡しても無視される」「天井から雨漏りしているのに、大家さんが何もしてくれない」――こんな経験はありませんか?

賃貸物件に住んでいると、設備の故障や経年劣化によるトラブルは避けられません。通常であれば大家さん(賃貸人)に連絡すれば修繕してもらえるはずですが、中には何度お願いしても対応してもらえないケースがあります。

私は東京都内の賃貸管理会社でパート勤務しながら、宅建士として日々入居者さまからのご相談を受けています。実務の現場では「修繕を頼んだのに放置されている」というご相談がたまに寄せられます。つらいですよね。暮らしに直結する問題だからこそ、一日でも早く解決したい気持ち、よくわかります。

この記事では、大家さんが修繕してくれないときに借主が取れる3つの法的対処法を、民法の条文や実務での具体例を交えながら、わかりやすく解説します。最後まで読んでいただければ、「自分にはどんな権利があるのか」「まず何をすればいいのか」がはっきりわかるはずです。

目次

そもそも大家さんの「修繕義務」とは?民法606条をわかりやすく解説

まず知っておいていただきたいのが、法律上、大家さんには修繕する義務があるということです。「お願い」ではなく「権利」として修繕を求められる根拠を確認しましょう。

民法606条が定める賃貸人の修繕義務の内容

民法606条1項は、次のように定めています。

民法第606条第1項
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

かんたんに言うと、「物件を普通に使える状態に保つ修繕は、大家さんの責任で行うもの」ということです。エアコン・給湯器・水道・雨漏りの補修など、入居者が普通に暮らすために必要な設備の修繕は、原則として大家さんが費用を負担して行わなければなりません。

ただし例外があります。入居者自身の故意や過失で壊した場合(壁を殴って穴を開けた、排水口にゴミを詰まらせたなど)は、大家さんに修繕義務はありません。

修繕義務の対象になるもの・ならないものの具体例

実務でよくご相談を受ける内容を「対象になるもの」「ならないもの」に分けると、次のとおりです。

大家さんの修繕義務の対象になるもの(代表例)

  • エアコンの故障(備え付けの場合)
  • 給湯器の故障
  • 雨漏り・水漏れ
  • トイレの水が流れない
  • 窓ガラスのひび割れ(経年劣化・自然災害の場合)
  • 建物構造に関わる壁や床の不具合

対象にならないもの(代表例)

  • 入居者が自分で持ち込んだ家電の故障
  • 電球・蛍光灯の交換(消耗品扱い)
  • 入居者の過失で壊れた設備
  • 契約書で「入居者負担」と明記されている軽微な修繕(パッキン交換など)

契約書に「修繕は借主負担」と書いてあったら?特約の有効性

「うちの契約書には”修繕費用は借主負担”って書いてあるんです…」というご相談もよくいただきます。

結論から言うと、すべての修繕を借主負担とする特約は無効になる可能性が高いです。消費者契約法10条では、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされています。また、判例でも「建物の主要構造部分や基本的設備の修繕まで借主負担とする特約は、信義則に反し無効」とした例があります。

ただし、軽微な修繕(蛇口のパッキン交換、障子の張り替えなど)を借主負担とする特約は、一般的に有効とされています。契約書の文言だけで諦めず、まずは専門家に相談することをおすすめします。

【対処法1】内容証明郵便で正式に修繕を請求する

口頭や電話、LINEで何度お願いしても動いてくれない大家さんに対して、最初に取るべき法的手段が内容証明郵便です。

内容証明郵便とは?なぜ効果があるのか

内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に・どんな内容の手紙を送ったか」を日本郵便が証明してくれる郵便のことです。

法的な強制力はありませんが、次のような効果があります。

  1. 「正式な請求をした」という証拠が残る(後の裁判・調停で有利になる)
  2. 大家さんに心理的なプレッシャーを与えられる(「法的手段も辞さない」という意思表示)
  3. 修繕義務を認識していたことの証明になる

私の実務経験では、内容証明を送った段階で約7割のケースが動き出すという印象です。大家さんも「本気なんだ」と認識を改めることが多いんですね。

内容証明郵便の具体的な書き方と出し方の手順

内容証明郵便の出し方は、実はそこまで難しくありません。以下の手順で進められます。

【手順1】文書を作成する

内容は以下を含めましょう。

  • 差出人(自分)の住所・氏名
  • 受取人(大家さんまたは管理会社)の住所・氏名
  • 物件の所在地・部屋番号
  • 修繕が必要な箇所の具体的な説明
  • これまでの連絡履歴(いつ・どのように伝えたか)
  • 「○日以内に修繕対応をお願いします」という期限の設定(通常14日〜30日)
  • 対応がない場合は法的手段を検討する旨

【手順2】郵便局の窓口で差し出す

  • 同じ内容の文書を3通用意します(差出人用・受取人用・郵便局保管用)
  • 郵便局の窓口で「内容証明郵便でお願いします」と伝えます
  • 費用は約1,500円〜2,000円程度(基本料金84円+内容証明480円+書留480円+配達証明350円)

【手順3】e内容証明(電子内容証明)を使う方法も

日本郵便の「e内容証明」サービスを使えば、24時間オンラインで差し出すことも可能です。Wordファイルをアップロードするだけなので、郵便局に行く時間がない方にはおすすめです。

【対処法2】借主自身で修繕して費用を請求する(民法607条の2)

2020年4月の民法改正で、借主にとって非常に心強い条文が新設されました。それが民法607条の2(賃借人による修繕)です。

民法607条の2の内容と活用条件

民法第607条の2
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。

つまり、以下の2つの条件のどちらかを満たせば、借主自身で修繕できます。

  1. 大家さんに通知したのに、相当の期間が経っても修繕しないとき
  2. 急を要する事情があるとき(冬場の給湯器故障、大量の水漏れなど)

「相当の期間」について法律に明確な日数の定めはありませんが、実務的には2週間〜1か月程度が目安とされています。エアコン故障が真夏であれば、より短い期間でも「相当の期間」と認められる可能性があります。

修繕費用の立替えと家賃との相殺の方法

自分で修繕した場合、その費用は大家さんに請求できます。根拠は民法608条1項(賃借人の費用償還請求権)です。

民法第608条第1項
賃借人は、賃貸物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

さらに、大家さんが費用を払ってくれない場合は、家賃と相殺することも法的には可能です(民法505条・相殺の要件)。

ただし、実務上は以下の点に注意が必要です。

  • 修繕前に複数の業者から見積もりを取る(不当に高額でないことの証明)
  • 修繕の必要性を写真や動画で記録しておく
  • 大家さんへの通知と、対応を待った期間の記録(内容証明の控えなど)を保管する
  • 修繕後の領収書を必ず保管する

費用を家賃から差し引く場合も、事前に書面で大家さんに通知しておくのがトラブル防止のポイントです。

注意点:やってはいけないNG行為

自分で修繕できるといっても、何でも自由に工事していいわけではありません

  • 大幅なリフォームや間取り変更は修繕の範囲を超えます
  • 大家さんへの事前通知なしに工事すると、トラブルの元になります
  • 相場からかけ離れた高額な修繕費は、全額が認められない可能性があります

あくまで「通常の生活に必要な範囲の修繕」を「適正な費用」で行うことが大切です。

【対処法3】家賃減額を請求する(民法611条)

修繕されない間の家賃について、実は減額を求める権利があります。2020年の民法改正で、この権利がより明確になりました。

民法611条の改正ポイント:「当然に減額される」の意味

民法第611条第1項
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

改正前は「減額を請求することができる」という表現でしたが、改正後は「減額される」に変わりました。つまり、借主が請求しなくても、使えない部分が生じた時点で法律上当然に家賃は減額されるのです。

家賃減額の目安はどのくらい?

日本賃貸住宅管理協会が公表している「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」では、設備故障時の減額割合の目安が示されています。参考値として:

不具合の内容月額減額の目安免責日数
エアコン故障(夏季)5,000円/月3日
給湯器故障4,000円/月3日
水漏れ(軽微)1,000円/月1日
雨漏り3,000円/月7日
トイレ使用不可12,000円/月1日

※上記はあくまでガイドラインの目安であり、法的拘束力はありません。実際の減額幅は個別の事情により異なります。

家賃減額を大家さんに伝える方法

家賃減額を求める際のステップは次のとおりです。

  1. 不具合の状況を写真・動画で記録する
  2. 不具合が発生した日付と、大家さんへの連絡日を記録する
  3. 書面(内容証明がベスト)で減額の通知を送る
  4. 大家さんと減額幅について協議する
  5. 合意できない場合は調停・少額訴訟を検討する

なお、一方的に家賃を減額して振り込むのはリスクがあります。大家さん側から「家賃滞納」として契約解除を主張される可能性があるためです。減額する場合も、根拠を示した書面を送り、できれば合意を得てから実行しましょう。

一人で悩まないで!無料で使える相談窓口一覧

法的な対処法がわかっても、「自分ひとりで大家さんと交渉するのは不安…」という方も多いと思います。そんなときは、無料で利用できる公的な相談窓口を積極的に活用しましょう。

自治体・国の無料相談窓口

相談先連絡方法特徴
消費生活センター(消費者ホットライン)電話:188(いやや)全国どこからでもつながる。賃貸トラブル全般の相談が可能
法テラス(日本司法支援センター)電話:0570-078374収入要件を満たせば弁護士への無料相談が可能(1回30分×3回まで)
各自治体の住宅相談窓口区役所・市役所に問い合わせ東京都は「賃貸ホットライン(03-6418-3601)」あり
宅建協会の無料相談各都道府県の宅建協会宅建士による不動産取引に関する専門的なアドバイス

弁護士・司法書士への相談を検討すべきケース

以下のような場合は、専門家への相談をおすすめします。

  • 内容証明を送っても1か月以上放置されている
  • 修繕費用の立替額が数十万円に上る
  • 大家さんと連絡がまったく取れない
  • 契約解除や退去を検討している
  • 修繕不備が原因で健康被害が出ている(カビによるアレルギーなど)

弁護士費用が心配な方は、まず法テラスで無料相談を利用し、そのうえで費用対効果を判断するのが賢明です。少額訴訟(請求額60万円以下)であれば、弁護士なしでも手続きが可能で、手数料も数千円程度です。

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まとめ:大家さんが修繕してくれないときのアクションプラン

最後に、この記事でお伝えした内容を実際の行動ステップとしてまとめます。

【ステップ1】証拠を残す

  • 不具合の写真・動画を撮影
  • 大家さん・管理会社への連絡履歴(日時・内容)を記録

【ステップ2】内容証明郵便を送る

  • 修繕を正式に請求し、期限(14〜30日)を設定
  • 費用は約1,500〜2,000円

【ステップ3】期限を過ぎても対応がなければ法的手段を検討

  • 自分で修繕して費用請求(民法607条の2、608条)
  • 家賃減額の通知(民法611条)
  • 無料相談窓口に相談(消費生活センター、法テラス等)

大切なのは、感情的にならず、証拠と法的根拠に基づいて冷静に対応することです。法律はきちんとあなたの味方をしてくれます。

賃貸管理の現場で日々感じるのは、多くのトラブルは「知らなかったから泣き寝入りしていた」というケースが本当に多いということ。この記事が、修繕でお困りの方の一歩を後押しできれば、不動産に関わる者としてこんなにうれしいことはありません。

一人で抱え込まず、まずは相談窓口に電話してみてくださいね。

よくある質問(FAQ)

Q1. 修繕を頼んでどのくらい待てばいいですか?

一般的には、修繕の内容に応じて1〜2週間が目安です。水漏れやガス漏れなど緊急性の高いものは即日〜数日以内の対応が求められます。2週間以上経っても何の連絡もない場合は、内容証明郵便での正式請求を検討しましょう。

Q2. 管理会社に言っても動いてくれません。大家さんに直接連絡すべきですか?

管理会社が動かない場合、大家さん(物件オーナー)に直接連絡するのも有効な手段です。管理会社が窓口になっている場合でも、法律上の修繕義務は大家さんにあります。大家さんの連絡先がわからない場合は、契約書を確認するか、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば所有者がわかります(手数料600円)。

Q3. 家賃を払わないことで修繕を強制できますか?

家賃の不払いはほぼ確実に避けてください。修繕義務の不履行と家賃の支払義務は別の問題として扱われるため、家賃を滞納すると契約解除・強制退去の原因になりかねません。家賃減額を主張する場合も、まずは書面で通知し、合意を得るプロセスを踏みましょう。

Q4. 退去時に、修繕されなかった期間の家賃を返してもらえますか?

過去にさかのぼって家賃減額分を請求することは可能です。ただし、不具合の発生日・大家さんへの通知日・修繕されなかった期間を証明する証拠が必要です。退去後でも少額訴訟や民事調停で請求できますが、時効は5年(民法166条)ですのでご注意ください。

Q5. エアコンが備え付けかどうかで対応は変わりますか?

はい、変わります。契約書や重要事項説明書に「設備」として記載されているエアコンは、大家さんの修繕義務の対象です。一方、「残置物」(前の入居者が置いていったもの)として記載されている場合は、修繕義務の対象外となることが多いです。入居時の契約書を確認してみてください。


この記事は、宅地建物取引士の資格を持つ筆者が、賃貸管理の実務経験に基づいて執筆しています。ただし、個別のケースについては必ず専門家(弁護士・司法書士等)にご相談ください。

最終更新日:2026年4月9日 | 不動産相談.com

※具体的な法的相談は、法テラス(日本司法支援センター)国民生活センター、またはお住まいの自治体の消費生活相談窓口にご相談ください。

ご注意
本サイトは情報提供を目的としており、個別の法律相談・契約相談はお受けしておりません。具体的な事案は、法テラス国民生活センター(消費者ホットライン:188)/各自治体の消費生活相談窓口、または弁護士・行政書士等の専門家へご相談ください。

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